Sensuousに生きよう。

何も考えてないように見える僕の頭の中は、日本酒が溢れ出るくらいにくだらないことで頭が一杯だ。

銀行員時代 集合研修編①

退職してからいつかは振り返ろうと思っていた僕の銀行員時代。まずは入行してすぐの集合研修について。確か研修内容とかあんま具体的に書くとNGだったからちょっとぼかさないとな。って言ってもほとんど覚えてないんだけど。

 

〜入行前〜

 

大学4年の冬、部活を引退してようやくストレスフリーな生活を送れると思っていたが、僕はどういう訳か引退した後もストレスある生活を送っていた。入行前の宿題として英語学習が課されていたからである。決められたカリキュラムに従ってネットで学習を行い、定期的にTOEICを受けてその成果を測る。これだけなら全くストレスではない。むしろ、当時海外勤務を目指していた身としてはやって当然である。僕が嫌だったのは、生徒(入行予定者)同士が進捗確認する場として設けられていた定例のグループミーティングだ。競争意識を与える為のものだろうが、苦痛でしかなかった。画面越しに参加者全員がだるいと思っているのがわかるし、ミーティングで話す内容もくだらない。

 

そもそも進捗確認することに何の意味があるのだろうか。残された大学生活が短い大事な時期に、自分より前向きに宿題に取り組む人を見て「くそっ」とは思わず、失礼な話かもしれないが「暇なんだな」と思った。後ろ向きな人を見て「ダメだな」とは思わず、「やるべきことが他にたくさんあるんだな」と逆に感心した。

 

企業が学生に対して入社前に宿題を課すことは反対しないが、過度な管理はするべきではない。最低ラインを設定した上で、その時々の個々の優先順位に委ねるべきである。銀行の堅い管理態勢を感じた事前課題であった。

 

〜入寮日〜

 

桜が開花し春の暖かさが感じられる頃、僕は泊まり込み研修に参加する為の大きな荷物を持ってとある駅に降り立った。スーツ姿の自分と似た格好の人を頼りに研修所行きのバス停まで歩く。バス停に並んだ人たちからは妙な緊張感が感じられ、自分もまた少し緊張していた。

 

研修所に着くとまず服装チェックが行われた。髪型、スーツ、靴、ネクタイ諸々を講師の人たちが一人一人丁寧に確認していく。列で待つ入行者の数は多かったが、事前資料で服装を指定されていた為、比較的スムーズに確認作業は進んだ。そして、いよいよ自分の番が来た。「よろしくお願いします。」

 

自分でも「まさか」と思ったが、上に挙げた髪型、スーツ、靴、ネクタイ全てOUTだった。他にも何人かOUTの出る人はいたが、全てダメだった人は僕以外にいなかった。まさに、アウトデラックス状態である。寮に移動した後、近くの美容院とスーツ屋さんに行き合計5万以上使ったことを覚えている。

 

指定があったにも関わらずなぜ僕は全てOUTだったのか。集団に同質化されるのがどうしても嫌だった僕は、指定されたもの全てにおいてギリギリを攻めた。OUTとなった以上もはやギリギリとは言えないのだが。結果、多くの人に迷惑をかけ自分でも痛い目見ることになったが、今でも一切の後悔はない。

 

〜入行日〜

 

4/1、この日は世間一般にほとんどの企業で入社式が行われる、新社会人門出の日だ。当行もまた本社で入行式が行われた。

 

本番前に司会者の人から進行説明があり、起立、着席、礼の練習を数百人もの人が一緒になって行う。本番では、壇上に立った"神々しい"頭取の話をみんなが一生懸命になって聞く。みんなと同じ時に同じ行動をする自分を見て気づく。そう、僕たちは兵隊さんだ。○○銀行という軍隊に入隊するのだ。中には「よっしゃいくぞー!」と特攻隊長のようにアツい気持ちを持った新入隊員もいるだろう。しかし、僕は違った。「この中で僕が死んでも誰も僕のことを覚えていないに違いない。」そう考えただけで、急に心が悲しくなった。

 

入行式が終わりバスで研修所まで移動した。互いを知らないせいか、バスの移動中はやけに静かだった。到着して休憩をとった後、入行そして研修にあたっての説明が行われた。色々な書類を書いたりしているうちにあっという間に時間が過ぎ、1日が終わっていた。

 

手続き作業を通じて問題認識したことは、契約書等の重要な書類もある中で説明がどこか作業的に行われていたことだ。多くの新入社員の手続きを限られた時間で進めようと思ったら、細かい説明を省かざるを得ないのかもしれない。書く側もほとんどの人が会社と契約を結ぶことを軽視しており、これを疑問に思わない。僕からすれば彼らは異常であるが、これが日本社会によって学生に植え付けられた思想であり、彼らを否定することはできない。この日以降様々な研修カリキュラムが組まれていたが、企業の歴史なんかを学ばせる前に、企業と個人との関係性について議論させた方がよほど社員の為になる。

 

業後には入行前の英語学習の最終確認テストとしてTOEIC受験が待っていた。みんなヘトヘトの状態での受験である。頭がぼーっとする中でリスニングテストを受ける辛さは容易に想像できるだろう。「なんで今日なんだよ。」という声があちこちで聞こえた。

 

TOEICを終え寮への帰り道。冗談交じりではあったが、たまらず同僚に一言。

 

「銀行、辞めたい。」

 

自然と意気投合した。そして、この時僕は想像していなかった。

彼が僕の人生を大きく変えることになることを。